【フィールドワーク①】岩内港で海水温を実測|港内で最大0.8℃差があった

北海道ショア海水温レポート

釣りをしていると、こんな疑問を持ったことはありませんか。

「同じ港なのに、釣れる場所と釣れない場所がある」

SNSの釣果情報を見ても、同じ日に同じ港で釣果が分かれることがあります。

その原因の一つとしてよく言われるのが、海水温の違いです。

しかし実際のところ、
「港の中でどれくらい水温差があるのか」
という実測データは、ほとんど公開されていません。

そこで今回、北海道の岩内港で水温フィールドワークを行い、港内の表層水温を複数地点で測定してみました。

その結果、同じ港内でも
最大0.8℃の水温差
が確認されました。

さらに釣れたホッケの胃内容物を確認すると、
ニシンの卵が見つかりました。

この記事では、岩内港で行ったフィールドワークの結果をもとに、

・港内の水温分布
・当日の釣果とベイト状況
・港の中にできる「見えないフロント」の可能性
・今回の観測から生まれた6つの仮説

を整理していきます。

この記事を読むことで、
港の中でも魚が付きやすい場所を「環境の違い」
から考えるヒントが見えてくるはずです。

釣り場の見方が少し変わるかもしれません。


岩内港で初フィールドワークをした理由

今回の目的はシンプルです。

「港内の水温差を実測すること」

普段の釣りではどうしても

・釣果情報
・潮汐
・ルアー
・風や波

に意識が向きがちです。

もちろんそれらも大事ですが、魚の行動を決めている土台には
海の環境条件
があります。

その中でも特に重要なのが、水温です。

ただし、一般的な海況サイトで分かるのは沖の水温や広域の傾向までで、
「港の中の水温」
までは見えてきません。

そこで今回は、港内を歩きながら水温を測定するフィールドワークを実施しました。

今回の岩内港の観測は、
「北海道ショア海況フィールドワーク」シリーズの1回目です。

今後は他の港でも同様の観測を行い、
港ごとの海況の違いを検証していく予定です。


当日の観測ログと海況

観測場所・観測日・滞在時間

観測場所
北海道・後志エリア 日本海側 岩内港

観測日
2026年3月5日

現地滞在時間
11:00〜18:00

※本シリーズでは、岩内港・小樽港・石狩湾新港のようなメジャー港は港名をそのまま記載し、規模の小さい漁港はエリア名のみで表記しています(釣り場保護のため)


当日の海況データ

公開されている海況データと現地観測を合わせて整理すると、当日の状況は次のようなイメージでした。

発表水温
7.6℃

天候
11~15時:晴れ
15~17時:曇り・1分くらい0.1mm以下のごく弱い雨あり。

大潮
干潮
10:59
22:59
満潮
04:29
17:00

風向
北西

風速
午前:微風
15時以降:最大4m/s程度

波高
午前中:穏やか
15時以降:外海が荒れ始める

波周期
約2秒
周期が短く、波高が上がると海面が荒れやすい状況でした。

現地での目視観測

11:00〜15:00

外海と港内の水は比較的穏やかに循環している印象でした。
ただし目視で分かるほどの潮目や流れの境界は確認できませんでした。

15:00〜17:00

外海が荒れ始め、その影響で港内にも変化が出始めました。

千切れた海藻や漂流ゴミが港内へ流れ込み、メタルジグにも海藻が絡むようになりました。

このタイミングで潮の向きも
外海 → 湾奥方向
に流れ込むような印象に変化しました。

観測方法と使用した道具

今回のフィールドワークでは
3種類の水温計を使い分けて水温の調査をしました。

観測方法と手順を以下に記載します。

観測ライン

今回の水温測定では、港の外海側から湾奥方向に向かって一本の観測ラインを設定し、そのライン上で水温を測定しました。

外海側

港中央

湾奥

という形で港内を横断するように測定することで、港内の環境変化を一つのラインとして把握することができます。

環境調査ではこのような方法を**トランセクト観測(横断観測)**と呼び、環境の違いを調べるときによく使われる手法です。

さらに今回は、複数地点の水温を並べて見ることで、港の中でどのような水温分布ができているのかを確認しました。

これはいわば 「港内水温の簡易マッピング」 のようなもので、港の中の環境構造を理解するための手がかりになります。

測定対象

・表層水温(港内複数地点)
・ボトム水温(先端部のみ)

港内を横断しながら、
約50mごとに表層水温を測定しました。

こうして港内を横断する形で水温を並べてみることで、
港の中にどのような環境差があるのかを確認します。


使用機材

デジタル水温計

表層水温測定に使用。
小数点単位で測定が可能。

バケツで海水を汲み、その場で測定しました。


アナログ水温計

ボトム水温の簡易測定に使用。
小数点単位での測定は不可能。

測定方法

ボトムまで沈める

約1分待つ

高速回収

目盛りを読む

ボトムの大まかな傾向を把握する目的では有効でした。


赤外線温度計

護岸コンクリートの表面温度測定に使用。
小数点単位での測定が可能。



港内水温の結果|最大0.8℃差があった

港内の複数地点で表層水温を測定したところ、
最大で約0.8℃の差が確認されました。

岩内港の港内水温観測ライン図(外海側・港中央・湾奥)

魚は変温動物のため、水温のわずかな違いでも

・活性
・レンジ
・ベイトの付き方

が変わる可能性があります。

そのため、同じ港の中でも水温差があれば、魚の付き場に影響している可能性があります。


港内ゾーン別の水温イメージ

観測ラインを

外海側
港中央
湾奥

の3つのゾーンに分けて整理すると、今回の観測では次のような傾向が見られました。


外海側ゾーン

港の入り口付近で、外海と最もつながっているエリアです。

今回の測定では

正午
約8.3℃

夕方
約8.6℃

と、時間帯による大きな変化は見られず、比較的安定した水温でした。


港中央ゾーン

外海側と湾奥側の中間にあたるエリアです。

測定値にはばらつきがあり、

8.3〜9.0℃

の範囲で記録されました。

多くの地点では
約8.6℃前後でしたが、

約50mほどの近い距離の地点でも
8.3℃と9.0℃という差が確認されました。

この2地点はいずれも湾の中央付近に位置しており、岸際と沖側の違いではなく、
同じゾーン内でも局所的に水温差が生まれている可能性が見えてきました。

港中央付近では、外海から入る水と湾奥側の水が混ざり合うことで、
小さな水温境界のような構造ができているのかもしれません。


湾奥ゾーン

港の最奥部で、比較的水深が1m前後と浅く、水が滞留しやすい場所です。

そのため

・日射による昇温
・夕方の気温低下による冷却

といった 大気環境の影響を受けやすい可能性があります。

今回の観測でも、湾奥では

正午:8.6℃
夕方:7.8〜8.2℃

と水温の低下が確認されました。

浅い水域では、水量が少ないため環境条件の変化に対して水温が動きやすいのかもしれません。


先端部のボトム水温

港の先端部でボトム水温を測定しました。

測定時間

12時
17時

結果はどちらも

9℃

でした。

海底水温を測定したアナログ水温計

表層水温は時間や場所によって変化が見られましたが、ボトム水温は短時間では大きな変化が見られませんでした。

ボトム付近の水は、表層よりも環境変化の影響を受けにくく、比較的安定している可能性があります。


コンクリート表面温度

護岸コンクリートの表面温度も、赤外線温度計を使って測定しました。

正午の測定では

15.2℃
17.5℃
20.2℃

という値が記録されました。

同じ場所でも測定値にばらつきがあり、これは

・測定角度
・表面の質感
・狙った測定位置の違い

などの影響を受けている可能性があります。

一方、夕方の測定では

9.4〜9.6℃

と、ほぼ同じ値で安定していました。

このことから、日射の影響が強い時間帯ほどコンクリート表面温度は変動しやすい可能性があります。


当日の釣果と胃内容物

釣果

岩内港で釣れたホッケ
今回のフィールドワーク中に釣れたホッケ(約35cm)。

ホッケ3匹
(35cm前後キープ2匹)

胃内容物

・ニシンの卵
・海藻片

今回よく釣れていたのは
海藻が多い湾奥側でした。

これは

海藻

ニシン産卵

魚卵

ホッケ

という

卵ベイトパターン

だった可能性があります。


今回のフィールドワークから生まれた仮説

今回の観測から
次の6つの仮説が見えてきました。

仮説① 港内水温勾配仮説

今回の観測では、港内を

外海側
港中央
湾奥

の3つのゾーンに分けて水温を測定したところ、
最大約0.8℃の差が確認されました。

観測結果を整理すると、港内の水温には次のような傾向が見られました。

外海側:水温が比較的安定
港中央:外海側と湾奥の中間的な水温帯
湾奥:日中はやや高めだが、夕方に低下する傾向

このことから、港内では外海側から湾奥にかけて
水温の性質が少しずつ変化する構造が形成されている可能性があります。

つまり港の中は一枚の均一な水ではなく、

外海から流入する水
港内で滞留する水

など、性質の異なる水塊が並ぶことで
ゆるやかな水温構造(水温勾配)が生まれているのかもしれません。

このような水温差は、

・外海水の流入
・港内水の滞留
・港の地形や構造

といった要因によって形成されている可能性があります。

仮説② 港内ミニフロント仮説

外海側と湾奥側で水温が異なっていたことから、

その中間には境界のようなゾーンが存在している可能性があります。

これは外洋で言われる

潮目(フロント)

に近い構造です。

ただし港内の場合は、

  • 水温差:0.5〜1℃程度
  • 流速:比較的弱い
  • スケール:小さい

ため、海面に線として現れることはほとんどないと考えられます。

そのため港の中には、目には見えない

小規模な水の境界(ミニフロント)

が存在している可能性があります。

もしこの仮説が正しければ、港内でも

・ベイトが集まりやすい場所
・捕食魚が待ち伏せしやすいライン

が形成されているかもしれません。

仮説③ 卵ベイト → 稚魚ベイト移行仮説

今回釣れたホッケの胃内容物からは、ニシンの卵と思われるものが確認されました。

北海道沿岸では、ニシンは冬から春にかけて浅い海藻帯に産卵します。

そして水温が7〜8℃程度の場合、
孵化までの期間はおよそ2週間前後とされています。

今回の岩内港の発表水温は約7℃台後半だったため、

今回の状況は

卵ベイト期のどこか

を切り取ったタイミングだった可能性があります。

つまり、この海藻帯では、

ニシン産卵

卵ベイト期

孵化

稚魚ベイト期

という形で、ベイト構造が時間とともに変化していく可能性があります。

同じ場所でも、季節やタイミングによってベイトの種類が変わるのかもしれません。

仮説④ 餌場滞在仮説

ホッケは一般的に回遊魚として知られています。

しかし今回の観測では、潮通しの良い場所よりも海藻が多い湾奥側で釣果が出ていました。

さらに胃内容物にはニシンの卵が確認されています。

このことから今回のホッケは、単に回遊してきたというよりも、

海藻帯の餌場に滞在していた可能性

があります。

つまり回遊魚であっても、

  • ベイトが豊富
  • 捕食効率が高い

といった条件が揃えば、局所的に一定時間とどまることがあるのかもしれません。

仮説⑤ コンクリートホットスポット仮説

今回、赤外線温度計で護岸コンクリートの表面温度を測定したところ、

正午の測定では
最大20℃前後

という値が確認されました。

ただし春の条件では、港内水温差の主因になっているほどの影響は見られませんでした。

しかし夏になると、

  • 強い日射
  • 浅い水深
  • 護岸コンクリートの蓄熱

などによって、護岸際の水温が局所的に上昇する可能性があります。

もしそうなれば港内には、

人工的な暖水域(ホットスポット)

が形成されるかもしれません。

これが魚の行動やベイト分布に影響する可能性もあり、今後の観測テーマの一つになりそうです。

仮説⑥ 季節フロント移動仮説

港内で水温差が存在する場合、その境界となる「フロント」の位置は季節によって変化する可能性があります。

今回の観測では、港内の

外海側
港中央
湾奥

というラインで水温差が確認されました。

しかしこの構造は、季節によって変化する可能性があります。

例えば冬から早春にかけては、

  • 外海側は低水温で波の影響を受けやすい
  • 湾奥は比較的水が滞留しやすい

という条件になりやすいため、

湾中央〜湾奥寄り

に水の境界ができる可能性があります。

一方で夏になると、

  • 護岸コンクリートの蓄熱
  • 浅場の昇温
  • 港内水の滞留

などによって港内側の水温が上がり、
そこへ外海の比較的冷たい水が流入すると、

湾入口付近

で水温境界が形成される可能性があります。

もしこの仮説が正しければ、港内の「魚が付きやすいライン」は固定ではなく、

季節によって
湾奥寄り → 湾入口寄り

へと移動している可能性があります。

つまり釣り場選びでは

「一番奥」や「一番潮通しが良い場所」といった固定的な考え方だけでなく、

水温構造の変化

を意識することで、より魚の付きやすい場所を推測できるかもしれません。


今後の研究

今後は

・季節ごとの水温観測
・他港との比較
・ベイトと釣果の関係

などを検証していきます。


まとめ

今回の記事では、北海道の岩内港で行った海水温フィールドワークの内容を紹介しました。

港内を外海側・港中央・湾奥の3ゾーンに分けて水温を測定したところ、同じ港内でも最大0.8℃の水温差があることが確認できました。

また当日の釣果と胃内容物から、海藻帯ではニシンの卵をベイトとするパターンが発生していた可能性も見えてきました。

今回の観測からは

・港内水温勾配仮説
・港内ミニフロント仮説
・卵ベイト → 稚魚ベイト移行仮説
・餌場滞在仮説
・コンクリートホットスポット仮説
・季節フロント移動仮説

という6つの仮説が生まれました。

釣りは「とりあえず投げる」釣りから、
海の環境を読みながら狙う釣りへ変えることができます。

港の中にも、水温や流れによって魚が集まりやすいラインが存在しているかもしれません。

今後も北海道ショア各地でフィールドワークを続けながら、港内の水温構造と魚の付き場の関係を少しずつ検証していきます。

同じように海の中の環境を理解しながら釣りをしたい人にとって、この記事がそのヒントになれば嬉しいです。

この記事は
北海道ショア海水温フィールドワークシリーズ第1回です。

今後は

・小樽港
・石狩湾新港
・積丹エリア

などでも同様の観測を行い、北海道ショアの港内水温構造を検証していく予定です。

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